『ある愛へと続く旅』by大和晶1990年代前半、東ヨーロッパの血で血を洗う凄絶な民族紛争の激戦地となった街サラエボ。その記憶は未だ生々しいし、それをモチーフにした映像作品も少なくない。けれど、1980年代の多民族が共存し、世界各地から集まった若者たちが自由を謳歌するサラエボから、紛争真っただ中のかの地、さらに現代まで。20年以上の時代の流れを追いながら、民族紛争の悲劇の本質を見据え、癒えない傷を乗り越えて、次世代に託す未来への希望までをも描いた映画はなかったような気がする。主人公はローマで暮らすジェンマ。彼女はサラエボに住む旧友からの電話をきっかけに、16歳の息子ピエトロを伴い、自らの過去を訪ねる旅に出る。大学時代に留学したサラエボで、ジェンマはアメリカ人ディエゴと出会い恋に落ちる。結婚した2人は、ローマで新生活を始めるも、紛争勃発を知ってカメラマンのディエゴは現地へ。ジェンマも彼の後を追い人道支援活動に参加する。戦火をかい潜る状況下でも、子供を渇望する2人は、不妊症のジェンマの代わりに、ミュージシャンを目指す女性アスカに代理母を依頼。やがて彼女は出産し、ジェンマたち ...