『恋するリベラーチェ』by大和晶 2013年5月の第66回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で、ひときわ異彩を放ち、客席を大いに沸かせたのが、『恋するリベラーチェ』の主人公リベラーチェ役マイケル・ダグラスだ。何より、キンキラキンの衣装をまとって見せる、超絶技巧のピアノパフォーマンス・シーンは、唖然とするほど圧巻。最優秀男優賞はダグラスで決まりだね!と確信し、下馬評でも圧倒的に評価が高かったのだが…。 リベラーチェは、日本ではあまり知られていないけれど、1950年代から80年代初頭にかけて、ラスベガスを中心にアメリカで大人気を博した、天才的ピアノ・パフォーマー。高価な宝石を散りばめた豪華絢爛な舞台衣装や、ロールスロイスに乗っての登場など、観客を驚かせ喜ばせ魅了することに徹した至高のエンタテイナーでもある。さらに、あのエルヴィス・プレスリーが憧れ、後のエルトン・ジョンやマドンナのステージにも影響を与えたとさえ言われている、稀代のポップスターなのである。 映画は、そんなリーことリベラーチェの晩年、1977年から5年間に及ぶ若い恋人スコットとの恋愛模様を、綿密なリサーチを ...