『アイム・ソー・エキサイテッド!』by大和晶 『ボルベール<帰郷>』や『抱擁のかけら』など、このところ、人間の深い業や愛の深淵に迫る重厚なドラマで、すっかり“巨匠”の冠が相応しい監督となったペドロ・アルモドバル。その最新作は、なんと80年代の快作『バチ当り修道院の最期』や『神経衰弱ギリギリの女たち』などを彷彿とさせる、キッチュでカラフル、毒気に満ちたユーモアとエロスあふれる痛快コメディだった。この原点回帰は、初期からのファンにとって、胸躍るほどうれしい驚き。久しぶりのポップでゲイっぽいアルモドバル・テイストに、ニンマリと頬を緩めて酔いしれてしまった。 メインの舞台は、マドリード発メキシコ・シティ行き旅客機のビジネスクラス。ところがこの飛行機、実は機体トラブルで目的地には向かわず、管制塔からの指示を待って、上空をグルグル旋回し続けていたのだ。この空の上の密室で、クセ者だらけの登場人物たちが織り成すドラマが、まさに抱腹絶倒だ。ビジネスクラス担当のオネエ客室乗務員3人組は、乗客をリラックスさせようと、80年代の人気コーラスグループ、ポインター・シスターズのヒット曲「I’m ...