村上龍ニュープリント公開に向けてのコメントわたしは今でも、気分が落ち込だときなどに、あるシーンを見ることがある。 女王様サキが、主人公のSM嬢アイを豪壮な自宅に招待し、料理やワイン、 それにさまざまなドラッグを振るまったあと、バイブレーターをマイク代わりに持ち、 『恋のバカンス』を歌いながら踊る、というシーンだ。 『恋のバカンス』は60年代を代表する歌謡曲の傑作であり、天野小夜子演じるサキの演技とダンスは、 いろいろな意味で、80年代末の日本社会の爛熟と頽廃を象徴している。 高度成長まっただ中の60年代、一直線にバブルに向かう80年代末、 その組み合わせは、「決して戻ってこないもの」「絶対に取り戻すことができないもの」の存在を、 甘美な感傷として、わたしに思い起こさせるのである。 ――村上 龍 (2013年、冬)衝撃的な公開から23年!ニュープリント35mmによる上映が決定しました。 TOKYO DECADENCE『トパーズ』 監督:村上龍出演:二階堂美穂、天野小夜子、加納典明1991年 日本映画2月1日公開 芥川賞作家の村上龍が、「限りなく透明に近いブルー」(1979)、「だいじょうぶマイ・フレンド」(83)と同様に、自らの著作を映画化した監督第4作。情報、金、過剰な快楽といった欲望にあふれかえるバブル期の東京の中で、自らの存在意義や新しい価値を求めてさまようコールガールの女性アイの姿を描いたエロティックロマンス。高級SMクラブでコールガールとして働くアイは、占い師の助言に従いトパーズの指輪を買う。毎夜さまざまな男たちの間をさまようアイは、ある日、美しく誇り高いSM嬢のサキと出会うが……。主人公アイを演じたのは、後に米映画作家ハル・ハートリーの夫人となる二階堂ミホ。サキには天野小夜子。写真家の加納典明、小説家の島田雅彦、現代美術家の草間彌生など異色のキャストが実現。テーマ音楽は坂本龍一。92年劇場公開。2014年、35mmニュープリント版でリバイバル公開。配給:ジェイ・ブイ・ディー(C)2014JVD/Ryu Murakami Office詳細は下記までチェックイン!http://www.jvd.ne.jp/cine/TOPAZ/top.html