『7番房の奇跡』by大和晶 自分の身を守る術も知らないまま、無実の罪を着せられて、死刑を宣告される社会的弱者ヨング。そう書いてしまうと、悲惨で陰鬱な印象を与えてしまうかもしれないが、『7番房の奇跡』はその真逆。人の善意を信じ、いつか必ず正義が勝つと確信したくなる、前向きでハートウォームな、ある意味では“現代のおとぎ話”なのである。 無邪気な子供の心のまま大人になったヨングは、6歳になる娘イェスンと二人暮らし。彼らの目下の夢は、街のショーウィンドウに飾ってある、黄色いランドセルを買うことだ。けれど、そのランドセルが原因でトラブルが発生。ヨングは、未成年者の誘拐・強姦・殺人の罪で起訴され、刑務所に入れられてしまう。そこが7番房。いずれも軽犯罪の古参の5人は、初めこそヨングを極悪人と責め立てるけれど、寝ても覚めても娘イェスンを想って悲嘆に暮れる彼を見かねて、父と娘の再会大作戦を企てることになる。 やがて、看守を束ねる課長まで一役買って、ダンボールに入れられたイェスンが頻繁に監房にやって来るようになるのだが、周囲の人たちを動かした一番の要因は、ヨングの打算のない真っ直ぐ ...