『神聖ローマ、運命の日〜オスマン帝国の進撃〜』by大和晶 「現在を見誤る原因は過去への無知に尽きる」‐マルク・ブロックという、フランスの歴史学者の言辞で始まる『神聖ローマ、運命の日』は、キリスト教勢力とイスラム教勢力が攻防戦を繰り広げる、17世紀後半のヨーロッパが舞台。1683年9月11日、歴史の大きな転換点となった世紀の決戦を、ダイナミックかつドラマティックに描き出した、スペクタクル歴史大作である。 「黄金のリンゴ」と呼ばれたハプスブルク家の都ウィーンを手中に収め、さらにローマに侵攻して、キリスト教の総本山サン・ピエトロ大聖堂を掌握するという、大いなる野望に燃える、オスマン帝国の大宰相カラ・ムスタファ。彼が率いるトルコ大軍30万が進撃を開始し、瞬く間にウィーンは包囲されてしまう。対するウィーンの兵力は援軍を含めても5万足らず。頼みの綱のポーランド王ヤン3世ソビェスキの軍隊4万が約束通り参戦しても、多勢に無勢は変わりない。 そんな状況下で綴られる本作の主人公は、病を治す奇跡の修道士として民衆から敬われるマルコ・タヴィアーノ。名優F・マーレイ・エイブラハムが重厚に演 ...