想像超す3Dプリンター あのアイドルの等身大コピーもこっそりできる!?2月に発売された「Shade 3Dプリントデータ 壇蜜 ~地球防衛未亡人:ダン隊員~」なら、壇蜜さんの完璧ボディーがフィギュアとして出力できる(イーフロンティア提供)(写真:産経新聞) 殺傷能力のある銃が製造された事件で、一躍注目を集めた3D(立体)プリンター。米国のオバマ大統領が2013年の一般教書演説で、製造技術専門の教育機関を設立し、3Dプリント技術の教育を進めていると言及するなど革新技術として期待される半面、想像を超えた犯罪を生む危険性も指摘される。新たな脅威となりそうなのが、“究極の個人情報”である身体の3次元データの悪用だ。 ■ネットで手に入る3次元美女データ 3Dプリンターが安いものでは、1台10万円前後で手に入るようになったことで、ネットではそれに合わせた商売も登場している。 2月には映画の宣伝に合わせてセクシータレント、壇蜜(だんみつ)さんの「Shade 3Dプリントデータ 壇蜜 ~地球防衛未亡人:ダン隊員~」が4830円(現在は消費税増税により4968円)で発売された。 イーフロンティア(東京都新宿区)というメーカーの3DCG作成ソフトに対応したデータで、とりあえず手のひらサイズのフィギュアに出力すれば、前だけでなく後ろ姿も、きれいなプロポーションが完全再現される。さらに、画像を拡大していくと髪の毛やまつげの一本一本まで数えることもできるので、実物サイズで出力したらどうなるのか興味のあるところだ。ともかく、“3次元美女”をプリントアウトして、電脳外でも鑑賞したいという市場はすでにある。 わいせつの度合いを超えず、成人本人が希望してデータを売るのならば健全なビジネスの範囲だが、技術的には犯罪にも応用が可能だ。 ■立体盗撮の可能性 約5年前、レーザー光で頭部の立体データを測定してもらったことがあるが、取得に数十秒かかった記憶がある。今も等身大の人間の高解像度の3Dデータを得ようとすると、それなりの時間がかかり、市販品レベルで歩行中の人物のデータを撮ることは不可能だ。しかし、センサーを複数化することなどで高速化すれば、いずれは写真のように街を歩いている人に気づかれず、3D撮影することが可能になるに違いない。 好きな人物を勝手に撮影し、等身大の人形を作って楽しんだり、さらにはそれを他人に譲渡したりというのは、デジタルカメラがこの10年で急激に進化したことを考えると、10年もかからない近未来の姿だろう。しかし、悪用される側にとってはたまったものではない。 ■人体コピーの恐怖 さらに凶悪な犯罪に発展する危険性もある。2次元のコピー機で鍵の形状を一瞬で写し取れるが、3次元のコピーであれば顔認証などもくぐりぬけることが可能だ。 磁気データを読み取ってクレジットカードを複製するスキミングという手口がある。最近は、より安全な方法として金融機関が指や手のひらの静脈を使った「生体認証」を使用しているが、資産家を誘拐して指や手のひらを内部の血管構造まで含めて複製するといった犯罪も、決してSFだけの世界ではない。学会でも、静脈認証が万全ではないと指摘する学者もいる。 ただ、正と負の面を併せ持つのは、新しいテクノロジーの宿命。リケメン(理系男子)としては、2次元コピーに搭載されている紙幣偽造防止機能や、携帯電話のシャッター音のように、対策を施すことで新技術が健全に発展することを期待したい。(原田成樹)