第67回カンヌ国際映画祭レポートその2 by大和晶 カンヌの楽しみの1つは、朝一番に、映画祭期間中毎日発行される映画誌フィルム・フランセの「星取表を見る」ことだ。自分が気に入っている作品が高評ならうれしいし、評判が悪いとガッカリしたり、腹を立てたり。ただし、星取表の評価が、ストレートに賞結果に繋がるわけではない。例えば、今年のコンペ作品中、星取表の最高点「シュロのマーク」が8個並んだ一番人気は、ダルデンヌ兄弟監督の『Tow Days, One Night』である。マリオン・コティアールが演じる女性は、雇用契約打ち切りの危機に見舞われ、同僚たちに、臨時賞与を諦めて彼女の雇用継続を支持するよう頼もうと、土日をかけて奔走。労働者が置かれた厳しい現実を見据えつつ、連帯の可能性と一縷の希望を描き、清々しさが余韻する快作だ。『ロゼッタ』(99)と『ある子供』(05)で、2度パルムドールに輝き、加えて毎回無冠なしのダルデンヌ兄弟監督だけに、今度も何か受賞するのでは?と思わずにはいられない。だが、蓋を開けてみると、ダルデンヌ兄弟監督は、カンヌ・コンペで初めての無冠に終わる。下馬評は、 ...