懐かしい…。この名前を何年ぶりに聞いたのであろうか?ダニエル・シュミット。このスイスの異端の監督の作品を知りえたのは、今は六本木ヒルズになっているCINE VIVANNT(シネ・ヴィヴァン)だ。ミニシアターが80年代から90年代に続々と東京に出現した時代。シネ・ヴィヴァンこそ、先駆けであり本当に多くの映画と出会ったのを思い出す。六本木のWAVEビルの中で、より先鋭的な作品を日本に紹介し、かつまた、オシャレでカルチャーな場所。なにしろ、オープニング上映はゴダールの『パッション』そして次が『コヤニスカッティ』…タルコフスキーやパラジャーノフといった当時は珍しかったソ連の監督も積極的に公開。そして、なんといってもエリック・ロメールとダニエル・シュミットはセゾン=シネ ヴィヴァンがなくしては日本では出会えなかったかもしれない監督達です。実際、彼等の新作の多くは、ここで紹介され当時の若者達に影響を与えました。当時、20代だった私も多くの知られざる監督や作品を知りえた映画館…WAVEで知り得る先端の音楽情報と合わせて、先駆的な情報を感じ取れる場所になっていました。ファッションと音楽とアートと映画が同一線上で語られた時代…。いま、ダニエル・シュミットという名前にふれ、80年代東京を回想しました。あの頃は...という話ではなくあの時に感じた熱さを思い返します。あの、新しいものに出会えるワクワクする感じを…。 角 章