若死の女性作家シャオ・ホンの一生を描いたアン・ホイ監督の最新作「黄金時代」を見た。映画/脚本の虚構、シャオ・ホンの文章の虚構、無数登場人物が彼女との関係を語った虚構から浮かび上がって来るのは時代に局限されたくない、自分の思うままに生きようとした女性像だ。ある意味ではこの時期一番相応しい映画かもしれない。「黄金時代」というのは実は30年代シャオ・ホンが一時期日本の神保町のアパートに滞在した時、中国に残った彼氏シャオ・ジュンに送った手紙から引用された言葉だ:「これは私の黄金時代だ。でも鳥かごの中に生きている」。鳥かごに閉じ込められたくない、デモ抗争中の香港若者にとってもただ今は香港の黄金時代かもしれない。しかしいろいろな贅沢な映画の技法を駆使しおそらく今の中国で最優秀な若手の役者たちを集め、さらに潤い製作予算と資源で作られたこのアン・ホイ監督の渾身大作だが二度妊娠し二度子供が亡くなり中国の一番北のハルビンから一番南の香港に転々としたシャオ・ホンの短い人生を必ずしも旨く描いたとはいえない。恋人との離散を中心に描いたことは最大な原因かもしれない。さらにその恋も実はそんなに心を撃つものではなかった。今までいろいろなジャンルを撮ってきたアン・ホイ監督は「黄金時代」おそらく彼女最大な作品になるだろう。三時間の尺度はその野心が伺える。莫大な予算かけたにも関わらず中国の観客に媚びるところも全然ない(実際、この連休中、中国で劇場公開されたが、興行はとても苦戦していようだ)演出の至る所で監督の自信が溢れる。それでも成功しなかったのは伝記映画の難しさにあるかもしれない。シャオ・ホンの一生が旨く描いたとはいえないが、この映画の貴重さと重要性を損なうことがない。今年、中国圏で一番必見な映画だ。