先週香港デモ真っ只でデヴィッド・フィンチャーの最新作「ゴーン・ガール」の初日に駆けつけた。とても面白かったが、さすがなんの感想も書く気分がなかった。圧倒的に強いロザムンド・パイクとダメ男ベン・アフレックとの仁義なき戦いをサスペンスとユーモアを対立なし矛盾なく寸分も乱れない光影で描いたフィンチャーはまた新境地に入ったと言える。もちろん、もっとズレたり狂ったりしたほうが面白いという見方もあるだろうが、真面目なデヴィッド・フィンチャーにはちょっと厳しい要求だ。ロザムンド・パイクが如何に圧倒的に強いか或は悪か実はフィンチャーは異常に丁寧に描いている。事件の真相を追いつめた女性刑事を演じたキム・ディケンズもまた素晴らしい。ほかに登場した女性たちもとてもよかった。来年のアカデミー賞ではロザムンド・パイクを女優賞、キム・ディケンズを助演賞の候補になる可能性が高いと思うが、男たちだけはなぜか全員ダメ男で実はミスキャストでもある。このアンバランスはデヴィッド・フィンチャーの狙いかもしれない。去勢(ゴーン)された女というよりも去勢された男はこの映画の裏デーマでもあるからだ。スクリーンで久しぶりに女に狂わせられたいと渇いている貴方には「ゴーン・ガール」は絶対おすすめ。