深田 晃司「深田です。10月1日 明け方。ようやく、新作映画『さようなら』のクランクインが紆余曲折を経ながらも眼前に見えてきました。今月中にはインとなります。原作は平田オリザさんのアンドロイド演劇『さようなら』。20分ほどの先鋭的な演劇を長編劇映画に織り直します。 前作『ほとりの朔子』は、2012年の晩夏に撮影を終え、一年近く仕上げに追われ、翌2013年10月に東京国際映画祭で上映されました。その後、2014年1月に封切りし、怒濤の宣伝活動に右往左往しているうちに月日は過ぎて、おかげさまで今日もしぶとく、フォーラム福島にて上映中です。 『ほとりの朔子』、多くの非メジャー映画がそうであるように人手も資金も潤沢というわけではなく、カントクも総力戦で当然いろいろと働きます。ポスプロのアレコレから公開準備のアレコレまで。その間、新しい映画なんぞ作る暇は当然なかったので(途中、ちょっと短編映画に寄り道したけれど)、長編映画は2年ぶりとなります。たった2年でまた映画作りに勤しめるのは果報者と言うべきなのでしょう。 朔子の上映に立ち会い続け、しみじみ思うのは、ひとつの映画を仕上げてひとりでも多くの人に見せてゆくという作業は大変で、他の映画を作りながら、ましてや監督しながら片手間でできるものではないなあ、本来。ということ。 観客動員数は日本映画黄金期の10分の一になりながら、製作本数は全盛期のそれを上回るという笑えない不条理を抱える日本映画界、「作れば良いというものではない」と考えこんでしまいますが、それなりに資金集めに時間を掛けてきたこの企画(3年。実は『朔子』より先)、ようやく製作の目処がつきました。『朔子』に引き続き、スタッフ、キャストももったいないような人材が集まりつつあります。とにかく面白い映画をお届けできるよう尽力します。 唐突に何の決意表明か分からない文章ですが、明け方に思い立って書いてみました。」