台湾で100万人以上を動員し、3ヶ月を越えるロングラン大ヒットとなった『天空からの招待状』が日本でも2014年12月20日から東京・シネマート新宿、シネマート六本木、大阪・シネマート心斎橋ほか全国で順次公開される。「天空からの招待状」は、航空写真家として20年のキャリアを持つチー・ポーリン監督が、初めてメガホンを取り、初監督作品で第50回金馬奨の最優秀ドキュメンタリー賞を受賞した作品だ。シネフィルアジアでは公開にあたって、来日したポーリン監督に、この作品を生み出した製作秘話を聞いた。インタビュー:園田恵子 構成:シネフィルアジア編集部k「もともと、わたしは長年にわたって、航空写真家として航空撮影、いわゆる空撮をしているのです。この映画を撮ろうと思ったきっかけは、長年、空から撮影していますが、工場の排水や、森林伐採、削られていく山の様子など、近年急速にすすむ環境破壊を目の当たりにしたからです。その様子は、空から見るとおそろしいほどでした。このまま見過ごしてはいけない、環境の変化で変わっていく台湾の大地の姿を、記録に残さなければならないと思ったからです。ただ製作にはたくさんの予算が掛かるので、多くの協賛をお願いしました。しかし、映画が興行的にもあたるとは思ってもらえず、自宅を売るほどの資金難で、多額の借金を自らしてこの作品を生み出しました。本当に、映画を作りながらも、誰も見てくれないかもしれないとも思っていましたよ」確かにこの映画は、淡々と台湾上空からのカメラが台湾のありのままの姿を捉えていく。カメラは、山・海・田園など美しい島の自然を捉える一⽅、工場の煙 突からもくもくと噴き出る白煙や、工場排水によって異常な色に染 まった河川をも映し出す。美しい風景が時として、環境を破壊して蝕まれていく姿も描き出されているのだ。リッキー・ホーの音楽とともに93分間の叙情詩は、監督自らのメッセージを明確に、映画をみる私たちに伝えている。「結局、製作に3年以上。予算として3億3500万以上掛かりました。その多くが撮影代です。なにしろ、すべてを上空から撮影する場所を選び、場所によっては天候によって、2年以上待たされた場所もあります」台湾ではアメリカの4倍のヘリチャーター料がかかるという。製作費がどうにか確保できてからは、天候との戦いだったという。「それに撮影は、毎回ヘリコプターをチャーターするので、天候を見極めるのが大変でした。今までの航空写真家としての直感がなければ、撮影できなかったでしょう。それでも、完成するまでに撮影に使った時間は、延べ400時間です」「実はこのような風景が撮影できたのは、アメリカの軍事撮影に開発されたシステムがなかったら不可能でした。このカメラシステムを購入するにはアメリカ国防省の許可を得なければならなかったのです。これだけで7000万円も掛かりました。今でも、アジアでは日本と私以外でこのシステムを持っている人はほとんどいないでしょう。なおかつ、長編のドキュメンタリーに使われたのは、初めてではないでしょうか」「この映画ではホウ・シャオシェンやニエンジェン、リッキー・ホーなどの、台湾の著名な映画人も参加しています。撮影を進めていくなか、私は、大変影響力のある著名な彼等に、アプローチしました。彼等はこの企画の意図に強く共鳴してくれて、本当に安い金額にも関わらずこころよく協力してくれたのです」本作は台湾でも、かつてないほどの大ヒットを記録している。「この映画のヒットで多くの人々が自分の国を見直そうと言うきっかけになったのでしょう。国さえも、産業が発達していくことと同時に民衆の声により耳を傾けていくようになったともいえるのではないでしょうか」この映画は、言葉のない空撮からはじまる。徐々にナレーションがかぶさり、ボレロのようにその大地の自然に対する愛のある言葉がニエンジェンによって朗読されていく。日本語版のナレーションには、この映画に賛同する俳優の西島秀俊が担当し、話題となっている。チー・ポーリン監督は、今後は空撮写真家に戻るという。しかし、今後も動画での記録は続けていくという。最後に、日本について一言とお願いすると、「台湾と日本は近い国です。台湾の事を応援していただきたいのと同時に、日本でも同じような環境の問題があるでしょう。この映画を見て、自分の国の事を、今一度考えていただきたいと思っています」と笑顔で答えた。インタビュー:園田恵子 構成:シネフィルアジア編集部k2014年12月20日、日本公開2013年・台湾作品/ドキュメンタリー/中国語/日本語字幕/上映時間93分 cTaiwan Aerial Imaging, Inc. 提供:アクセスエー/シネマハイブリッドジャパン製作:ホウ・シャオシェン 「悲情城市」他監督・撮影:チー・ポーリン音楽:リッキー・ホー 「セデック・バレ」 ナレーション:ウ―・ニエンジェン 「ヤンヤン 夏の想い出」日本語ナレーション 西島秀俊 日本配給:アクセス・エー/シネマハイブリッドジャパン 配給協力&宣伝:フリーストーンプロダクションズ公式サイトhttp://www.tenku-movie.com