シネフィルアジア新連載:劇作家・山崎哲のシネマノート 第五回 -cinefil.asia S・スタローン「ランボー」(1982)ベトナム帰りの男、われらがランボーはなぜ闘うのか 2015年1月24日 ベトナム戦争を描いたいい映画はたくさんあるけど、この作品はそのベスト3に入れてもいいんじゃないかなあ、と思うくらいいい映画だし、私の好きな映画。ついでに言っとくと、「ロッキー」もいいんだけど、シルヴェスター・スタローンの中ではいちばんいい映画かもね。 元グリーン・ベレーの隊員(スタローン)が、ベトナム戦争のときに一緒に戦った友人を尋ねると、その友人はもう自殺していた。というところから始まるんだけど、この映画、もうそこでほとんど決まっちゃってるんだよね。 なんで自殺したのか全然説明はないんだけど、そのあと帰る場所をなくしたスタローンが、その田舎町の地方警察にいわれない迫害を受けるのみてると、「ああ」って、なんとなくわかるんだよね。自殺した友人も、ベトナム戦争から帰ったあと、こういう迫害を受けたんだろうなあって。 国家のために戦った兵士がなんでこういういわれなき迫害受けなくちゃいけないの?と思うんだけど、結局負けちゃったからじゃないの。アメリカって一切敗北を認めたがらない国だからなんじゃないのなんて思っちゃうよな(笑)。 そのあとの物語は、あまりの仕打ちにスタローンが怒って、警察を山中に誘い込み、ベトナム戦争で習得した戦術を駆使して次々に殺害していくっていうだけの映画なんだけど、ほんとにただそれだけ? ほんとうは、このベトナム帰りの男、ベトナム戦争の後遺症で狂っちゃってんじゃないの、「ディアハンター」みたいに。警察をベトコンだと思って戦ってんじゃないの。自殺した友人の仇とってんじゃないの。 「ロッキー・ザ・ファイナル」でも書いたんだけど、スタローンにはイタリア移民の血が流れていて、しかもポルノ男優って過去があるんだけど、それでなんだか、これ、スタローンがアメリカを敵にして次々に殺してんじゃないの。 なんて、まあ、あることないこといろいろ想像しちゃうんだよなあ。でなきゃ町を殲滅させるところまでやるかなあって。 そこがおいらにはものすごく面白いところ(笑)。 これも脚本はシルヴェスター・スタローン自身なんだけど、物語の作り方がうまいよなあって感心する。スタローンのこの本作りのうまさ、いったいどこから来てるんだろう? ■94分 アメリカ アクション/ドラマ監督: テッド・コッチェフ 製作: バズ・フェイトシャンズ シルヴェスター・スタローン 製作総指揮: マリオ・カサール アンドリュー・ヴァイナ 原作: デヴィッド・マレル 脚本: シルヴェスター・スタローン マイケル・コゾル ウィリアム・サックハイム 撮影: アンドリュー・ラズロ 音楽: ジェリー・ゴールドスミス 出演シルヴェスター・スタローン ジョン・J・ランボーリチャード・クレンナ サミュエル・トラウトマン大佐ブライアン・デネヒー ティーズル保安官ジャック・スターレット アーサーデヴィッド・カルーソー ミッチビル・マッキーニー デイヴ・カーンマイケル・タルボット ナルフォードクリス・マルケイ ウォードデヴィッド・クローリー シングルトンドン・マッケイ プレストン アメリカ北西部の小さな町を訪れた元グリーン・ベレーの隊員が、地方警察のいわれの無い仕打ちに絶えかね逆襲に出る。ベトナムで会得した戦術を駆使して、1対多の戦闘を見せる展開はアクション物としては及第。周囲から孤立して行く戦場帰りの男の悲哀も程良い味付けになっている。原題の“最初の血”には“どちらが先にしかけたか”の意がある。