JR渋谷駅の南口を出て、歩道橋を越え、さくら通りのゆるやかな坂道のなかほどに、今は同じく渋谷の円山町に移転したミニシアター、ユーロスペースがあった。1999年のことだった。その頃、19歳の私は大学生活にこれと言った目標を見出せず、モノづくりへの渇望感(それは承認欲求と表裏一体だったはずだ)ばかりを持て余していた。未来は漠として暗い。日々、渡り鳥のように東京都内の映画館を行き来して、時間の大半をその暗闇に身を埋め過ごす。ユーロスペースもそんな止まり木のひとつだった。ちょうどその頃はイタリアの鬼才ピエル・パオロ・パゾリーニ監督の特集が組まれ、私は朝から晩まで、この背徳的で、しかしどこかネアカな不思議な監督の作品に溺れていた。http://cinefil.tokyo/_ct/16848367